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弁護士法人いまり法律事務所

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給与差押えへの対処(続2) 30年前の判決で給与差押え?

今回は,
明らかに消滅時効が成立すると思われるのに,給与差押えがスタートしてしまった場合
の対処をとりあげます。

そんなことあるの? と思うでしょうか。昔の自分もそうでした。
レアケースではあるのですが,困ったことに皆無というわけではありません。

倫理的にはともかく,法的には,債権者側が「債務名義」を持っていれば差押え(強制執行)の手続の申立ては成り立ちます。

以前のコラムでも取り上げたように,給与差押えなどの「強制執行」の手続をするには,まず「債務名義」つまり権利を公的に証明する文書を取得することが必要です。
代表的な債務名義は,次のとおりです。

  1. 裁判所の手続によるもの:確定判決,裁判上の和解調書,調停調書,家事審判書,仮執行宣言付支払督促など
  2. 公証人作成のもの:執行証書(金銭支払の定めに加えて執行認諾文言のある公正証書のこと)

さて,債務名義があるからといって,消滅時効が成立しなくなるというわけではありません。
もちろん,時効中断事由である「差押え」ができるので,消滅時効の成立を防ぎやすくはなりますが,何もしないで放置していればいずれは消滅時効期間が経過します。

消滅時効期間が経過しますが・・・それだけで債務名義が失効するわけでもないのです。

どういうことかというと,

「債権者が債務名義をもっているが,消滅時効期間が経過していて時効中断事由もない場合」でも,「債権者が適法に強制執行手続を申し立てることができてしまう」(=裁判所が自発的にストップしてくれるわけではない)

ということです。

その結果,
「30年前の判決で給与差押えをされた」(判決後支払いは一度もしていないし差押えもこれまではされたことはなかったのに)
というケースが起こりうるのです。

その対処方法を説明します。「請求異議の訴え」と「強制執行停止」という2つの制度を使います。

  1. 請求異議の訴えを提起する(※管轄裁判所がどこになるかはかなり技術的なので省略)
  2. ⑴と同じ裁判所に「強制執行停止」を申し立てる
  3. ⑵に対して裁判所が執行停止の条件となる担保の額を決定する(※必ずではないがそうなることが多い)
  4. ⑶で決定された担保の額を,法務局に「供託」する
  5. ⑷の供託書を裁判所に提出し,「執行停止決定」がなされる
  6. ⑸の執行停止決定書を,給与差押えの決定をした裁判所に提出する
  7. 給与差押えの「停止」がなされる(※停止の段階では給与のうち差押対象部分は受け取れないことに注意。勤務先が,手元保管するか法務局に供託する)
  8. 請求異議の訴えの審理が進行し,判決で当該債務名義による強制執行の不許の判断がなされ,確定する
  9. ⑻の判決書・確定証明書等を,給与差押えの決定をした裁判所に提出する
  10. 給与差押えの「取消し」がなされる
  11. 立担保で供託した金額や停止中に供託された給与の受け取りの手続をする

過去の事件の経過を見ながら書きましたが,途中で疲れてきました・・・が,実際に同種のケースが起こってしまったら,このような対処をせざるを得ません。
一目で分かるとおり,たいへん技術的です。
しかも,差押えをされた側は担保金を供託する必要があり,その段階では「停止」だけなので給与の全額を受け取れるようにはなりません。たいへん迷惑です。

少なくとも金融会社が債権者の場合なら,消滅時効期間が経過しているかどうか,時効中断事由がありそうかどうかは,ほとんどの場合分かっているはずです。
債権者側で消滅時効にかかっていそうだとわかっていても,あえて給与差押えを実行してくる債権者が,残念ながら一部に存在します。これは経験談です。

以上のように,いったん強制執行手続が始まってしまうと,これを失効させて給与全額を受け取れるようになるまでには,相当の時間と労力が必要になります。
そもそもそうした事態に陥らないことが重要です。

判決をとられてしまい,支払いの目処が立たない状況であれば,早期に借金の整理に着手することが最善の方策です。
ぜひ,お早めにご相談ください。

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