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弁護士法人いまり法律事務所

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財産分与と税金

時々,ヘンな税金のかかり方が起きる場合があります。
なぜヘンなのに起きるかというと,民法などの争いごとの解決での考え方と,税法の考え方が違うからです。

例として,離婚の際の財産分与の場合を取り上げましょう。

ある夫婦が,20年以上の夫婦生活の末,離婚しようとしています。
夫から妻に,財産分与として,一定の財産を渡す方向になっています。

例えば,

  1. 金銭で500万円
  2. 時価500万円の不動産

を渡すとします。

民法ベースの考え方では,その内容の合意書面を作って,不動産については財産分与を原因とする登記手続をすれば済みそうです。
ところがですね。
こうすると,ヘンな税金のかかり方が起きます。

具体的には・・・

【分与で渡す側】

⑴金銭で500万円を分与したことについて
税金はかかりません。ここまでは違和感はありません。

⑵時価500万円の不動産を分与したことについて
所得税(譲渡所得)の収入になります。

 

税理士の先生にとってはたぶん常識なのだと思います。

弁護士の感覚的には相当受け入れづらいですが・・・。だって,実質的な夫婦共有財産を分割して,自分の持分を取得するだけですよ。
この扱いは,条文に直接は書いてありません。通達です(所得税基本通達33-1の4。https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/07.htm)。

最高裁の判例も,この扱いを認めています。
 
・最高裁第三小法廷昭和50年5月27日判決
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52096
・最高裁第一小法廷昭和53年2月16日判決
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=64156

※この税法上の扱いが原因となって財産分与の錯誤無効が主張されたケースもあります。
・最高裁第一小法廷平成元年9月14日判決
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=62387

最終的に課税がどうなるかは,事情によると思いますが,取得費がはっきりわからないとか,特有財産をあえて分与したような場合には,課税が生じやすいように思います。税理士の先生の役割が重要でしょう。

 

【分与でもらう側】

⑴金銭で500万円の分与を受け取ったことについて
原則として課税は生じません。

⑵時価500万円の不動産の分与を受け取ったことについて
原則として課税は生じません。

 

ただし,⑴⑵共通の例外として,

  • 分与財産の額が過大である場合(「その分与に係る財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合」)
  • 税の潜脱と認められる場合(「離婚を手段として贈与税若しくは相続税のほ脱を図ると認められる場合」)

には,贈与税が課税されます(相続税基本通達9-8。https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/01/06.htm#a-9_8)。

 

【まとめと対策】

基本的には,分与する側が不動産を分与する場合にだけ,課税の問題が生じることになります。
対策は,例えば以下のような方法があるようです。

  1. 不動産が自己居住用の場合で,婚姻期間20年以上の夫婦の場合,離婚する前に生前贈与する。贈与された側は,引き続き居住する。そして,贈与された側が贈与税の申告をすることで,「配偶者控除の特例」を利用による控除を受けられる可能性がある。
  2. 不動産が自己居住用の場合,離婚後に財産分与することで,分与した側が租税特別措置法上の譲渡所得の特別控除を受けられる可能性がある。

⑴も⑵も税法上の特例措置の利用ですので,必ず税理士の先生に事前に相談すべきです。
“特に⑵は,離婚前だと適用されない,という,ほとんどトラップのような制度に思えます(租税特別措置法35条2項1号括弧書きで,配偶者に対してする譲渡は除く,と書かれています)。

・・・やはり,感覚的にはしっくりきません。
同じことをするのに,形式を変えると課税が変わるのですから。これは税の世界では当たり前のことなのかもしれませんが。

しかし,感覚に反するからこそ,注意しなければいけないんですね。

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