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弁護士法人いまり法律事務所

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借金整理の新しい選択肢 
被災ローン減免制度と新型コロナ特則

あけましておめでとうございます。

被災ローン減免制度というものをご存じでしょうか?
おそらくまだあまり知られていない制度であり,もっと知られてよい制度です。
その一方で,かなり特殊な制度でもあります。

今回は,この被災ローン減免制度が,新型コロナウイルス感染症の影響を受けた方の負債整理にも適用されるようになったことをとりあげます。
まず全体像について,次に,被災ローン減免制度の説明,その新型コロナ特則の説明,と進めていきます。

 

 

1 全体像

被災ローン減免制度は,いわゆる債務整理の手法の一種です。正式には,「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」といいます。
この制度には,通常の債務整理とはかなり違う面があります。

通常の債務整理にないメリットがありますが,通常の債務整理とは別の注意点もあります。
そのため,2段階あるうちの1段階目と考えてもらうのがよいでしょう。

つまり,負債の解決を図りたい方にとって,

  • 被災ローン減免制度の対象になるか?
  • ならない場合,従来型の整理手続(任意整理・自己破産・個人再生など)のいずれをとるか?

というように位置づけるべき制度です。
詳しくは,以下で説明していきます。

 

 

2 被災ローン減免制度(本則)の説明

災害救助法の適用される自然災害の影響で,債務の支払が困難になった被災者(個人)について,一定の条件をクリアすれば,債務の減額や免除を可能にする制度です。
その主な特徴は,次のとおりです。

  • 全対象債権者の同意を得る必要がある
  • 信用情報機関に登録されない
  • 破産手続と比べて手元に残せる財産(自由財産)が多い
  • 自宅を手元に残すことも可能(「公正な価額」を支払うことが必要)
  • 原則として,保証人に対して保証履行を要求されない
  • 債務者は,弁護士・不動産鑑定士・税理士等の「登録支援専門家」の支援を,無料で受けることができる

 

手続のおおまかな流れは,次のとおりです。

  1. 債務者が,主要債権者に手続着手の申出をし,同意書の発行を受ける
  2. 債務者が,弁護士会等に支援専門家の委嘱依頼書を提出する
  3. 債務者が,支援専門家の支援を受けて,債務整理申出書,財産目録,債権者一覧表,その他必要書類を準備し,全対象債権者に送付する。(これにより弁済禁止・資産処分禁止等の「一時停止」状態になる)
  4. 債務者が,支援専門家の支援を受けて,対象債権者と協議しつつ調停条項案を作成,提示し,全対象債権者の同意をとりつける
  5. 全債権者の同意後,債務者が特定調停を申し立てる
  6. 特定調停成立により債務整理が確定し,以降はその内容に沿って弁済を行う

 

調停条項の類型(=債務整理のタイプ)は,次のとおりです。

  1. 清算型(自由財産以外の財産を換価処分して弁済するタイプ)
  2. 清算型(自由財産以外の財産に相当する「公正な価額」を弁済し,手元に残すタイプ)
  3. 将来収入型(将来の収入で,清算価値以上の弁済額を弁済し,財産を手元に残すタイプ)
  4. 事業継続型(将来の事業収益で,清算価値以上の弁済額を弁済し,財産を手元に残すタイプ)

被災ローン減免制度を利用すると,破産手続より幅広く財産を残せる可能がありますが,本稿では省略します(新型コロナ特則での扱いは後述)。

 

 

3 新型コロナ特則の説明

被災ローン減免制度の拡張として,新型コロナウイルス感染症の影響で,債務の支払が困難になった個人債務者について,一定の条件をクリアすれば,債務の減額や免除を可能にする制度です。
2020年12月1日から適用が開始されています。
対象となる債務は,以下のとおりです。

  • 2020年2月1日以前に負担していた債務
  • 2020年2月2日~2020年10月30日までに,新型コロナの影響による収入や売上等の減少に対応することを主な目的として負担した債務(※2020年10月31日以降にした借入・借換えは制度の対象外)

 

被災ローン減免制度(本則)との主な違いは,次のとおりです。

  • 調停条項の類型(=債務整理のタイプ)として,「住宅資金特別条項型」(住宅ローンのみ,個人再生手続と同様の弁済方法にすることができる)も可能
  • 手元に残すことができる財産(自由財産)は,破産手続の場合の考え方が基本となる

手元に残すことができる財産(自由財産)は,被災ローン減免制度(本則)より狭くなっています。
その他の特徴や手続の流れは,被災ローン減免制度(本則)に準拠します。

したがって,新型コロナ特則でも,原則として保証人に請求がいかない,信用情報機関に登録されない,自宅を残すことができる可能性がある,専門家の支援,などのメリットがあります。
新型コロナ特則を利用できる場合,債務整理に要する期間は半年~1年程度の見込みです。

 

注意点も,いくつかあります。

まず,支援専門家は,債務者の代理人になるわけではないということに気を付けてください。
書類作成や対象債権者との協議の支援は受けられますが,債務者自身が動く必要がある場面が複数あります。

次に,制度を利用できるか(制度の対象になるか),全債権者の同意が得られるかなど,債務整理が成立するかどうか不確定な面があります。
上で「一定の条件をクリアすれば」と書いた点ですが,技術的な性格が強いので,専門家にご相談いただきたいところです。

 

代表的な条件をあげると,以下のとおりです。

  • コロナ起因性(新型コロナウイルス感染症の影響で収入や売上等が減少したこと)
  • 支払不能(住宅ローン・住宅リフォームローン,事業性ローンなどで制度の対象となる債務を弁済することができないか,近い将来に弁済できないことが確実と見込まれること)
  • 基準日(2020年2月1日)までに,対象債権者に対する債務について,期限の利益喪失事由に該当する事由がなかったこと
  • 上のもの以外にも条件があります)

 

もっとも,支障があるようであれば支援専門家の支援を受けて手続を進める中で明らかになる場合がほとんどですし,支援専門家から,代替の債務整理手続の情報提供があるはずです。

上に述べてきたように,被災ローン減免制度・新型コロナ特則は,従来型の負債の整理手続(任意整理・自己破産・個人再生)にはないメリットがあり,これらより前に,利用できるかどうか検討したい制度です。
一方,2020年10月31日以降の借入・借換えは対象にならないので,時間が経過していくとメリットも薄れていくと思われます。

 

いざというときの選択肢の一つとして,知っておいていただきたい制度です。

 

【参考】
・ガイドライン運営機関Webサイト掲載のチラシ
http://www.dgl.or.jp/guideline/pdf/disaster-gl-covid19_leaf.pdf

・ガイドライン運営期間Webサイトの新型コロナ特則紹介ページ
http://www.dgl.or.jp/covid19/

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