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弁護士法人いまり法律事務所

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差押禁止債権の範囲の変更の申立て

以前,給与差押えをされてしまった場合の対応(http://www.imari-law.com/columns/20190708/649/)について取り上げました。

法的には強制執行手続に問題がない場合(正当な権利行使である場合)には,自己破産や個人再生の手続をとって負債の解決を図ることが,セオリーだと述べました。

 

それでは,強制執行手続には問題がないけれども,自己破産や個人再生の手続をどうしてもとることができない,という場合には,何か対応策はあるのでしょうか?
それが,今回とりあげる「差押禁止債権の範囲の変更の申立て」です。

「差押禁止債権の範囲の変更の申立て」の制度は,これまであまり使われていませんでした。
それが,令和元年度民事執行法改正で
裁判所が債権差押命令を債務者に送達するときに,差押禁止債権の範囲の変更の申立てをすることができることを書面で教示しなければならないこと
が定められました。

さて,そもそも,債権者が債務者の給与を差し押さえるとき,「原則として」,その給付の3/4に相当する部分を差し押さえてはならない,とされています(民事執行法152条1項)
「原則として」というのは,例外もある,ということです。

 

例外の1つは,養育費等の扶養義務に関する債権ですが(差し押さえてはならない範囲が3/4でなく1/2になります),もう1つの例外が,「差押禁止債権の範囲の変更の申立て」による場合です。
「差押禁止債権の範囲の変更の申立て」には,以下の2パターンがあります。

  1. 債務者が,差押命令の全部または一部の取消を求めるパターン(※債権差押え一般に適用あり)
  2. 債権者が,対象債権のうち原則として差押えできない部分について差押命令を発するよう求めるパターン(民事執行法152条の債権にのみ適用)

債務者からの申立てだけでなく,債権者から申し立てることもできる制度です。

 

申立てがあった場合,裁判所は,「債務者及び債権者の生活の状況その他の事情」を考慮することとされています。
具体的には,債務者・債権者双方の,本人の職業,家族構成,家族の状況(健康状態や就労可能性)などの事情ということになるでしょう。

また,申立てがあったときの仮の処分として,裁判所は,申立てに対する裁判が効力を生ずるまでの間,申立人に担保を立てさせ,または立てさせないで,第三債務者に対して支払その他の給付の禁止を命じることができる,とされています。

 

これまで,この制度が使われる典型的な場面は,
公的年金や生活保護費が預貯金口座に入金されたタイミングで預金差押えをされた場合
でした。
公的年金や生活保護費は,本来,差押えができない差押禁止債権ですから,それが預金になった場合でも,「差押禁止債権の範囲の変更の申立て」が認められやすかったといえます。
法改正により,今後は,給与差押えの場面でも制度の申立てがなされることが増えるかもしれません。

 

もっとも,給与差押えへの対応として「差押禁止債権の範囲の変更の申立て」しか選択肢がない,というわけではありません。

むしろ,この制度はせいぜい対症療法であって,根本的な解決ではありません。
というのも,差押えの原因となっている債務には影響がなく,債務が減るわけではないからです。
むしろ,遅延損害金が大きくなるかもしれません。

あくまでも,自己破産や個人再生の手続によって負債の解決を図ることがセオリーですが,それを選択肢にできない場合,あるいは既に給与差押えをされてしまった場合の,緊急避難的な選択肢だと考えてください。

【参考】
大阪地裁 Q&A
札幌地裁 申立書書式例

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