企業顧問 債権回収 契約交渉 | 交通事故 債務整理 離婚

弁護士法人いまり法律事務所

loading

 / 

財産開示手続のハードルの高さはどの程度なのか?

民事執行法の改正については,以前にも取り上げました。

今回は,民事執行法改正で変わらなかった点の話題です。
強制執行手続のひとつに,「財産開示手続」という類型があります。

この類型が設けられたのは,平成15年の民事執行法改正ですので,比較的新しい制度です。
勝訴判決等を得た債権者が,裁判所を通じて,債務者に対して財産に関する情報の開示を要求することができる制度です。
ただ,利用は低調で,利用の要件が高い(ように見える)こと,債務者に対する強制力が不十分であること,等が指摘されていました。

令和元年の民事執行法改正では,財産開示制度にも変更がありました。

変更点としては,次の点があります。

  • 手続の申立てをすることができる者が拡大された
    従前:確定判決・和解調書・調停調書など ⇒ 改正後:金銭支払を定めた公正証書(執行証書),仮執行宣言付判決,確定判決と同一の効力を有する支払督促も追加
  • 財産開示制度に債務者が応じなかった場合(不出頭や虚偽陳述)のペナルティが強化された
    従前:30万円以下の過料(※刑事罰ではない) ⇒ 改正後:6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金(※刑事罰)

どちらも影響が大きい事項です。
公正証書による養育費の請求が対象に入るので対象範囲がかなり拡大しますし,ペナルティとして刑事罰があることによって債務者への強制力が高まることが期待されます。

一方で,財産開示手続の要件については,変更されませんでした。

具体的には,次のどちらかの要件が必要とされます。

  1. 執行不奏功:強制執行または担保権実行により6ヶ月以内に行われた配当等の手続で,申立人(債権者)が請求債権の完全な弁済を得ることができなかったこと(民事執行法第197条第1項第1号)
  2. 知れている財産への執行不奏功見込み:知れている財産に対する強制執行を実施しても,申立人が請求債権の完全な弁済を得られないことの疎明があったこと(民事執行法第197条第1項第2号)

改正前,これらのハードルが高すぎるのではないか,という指摘がありました。
法改正の過程では,他の強制執行と同程度にするべきではないか,という議論がなされました。

 

まず,⑴について。
条文の文言では,「配当等の手続」とあります。
これは,実際に配当までいく必要があるのでしょうか?

法人の債権者が,税務上の損金算入処理のために,とりあえず動産執行をして執行官の執行不能の判断を得る,という手法をとることがあります。
この「とりあえず動産執行⇒執行不能で不奏功」パターンは,⑴の要件を満たすでしょうか?

これについては見解の対立があり,どちらかというと「執行不能による不奏功」のパターンでも⑴の要件を満たす,という見解の方が有力ではあるようです。
しかし,決定的にどちらか一方が有力,というレベルではないようです。

 

もっとも,仮に「執行不能による不奏功」でも⑴の要件を満たすとしても,動産執行にも費用がかかります。
はじめから不奏功の見込みであるのにさらに費用がかかるのでは,高額でない債権や個人間の債権の回収には利用しにくいですね。

そこで,⑵の要件のハードルがどの程度であるのか,これが重要になってきます。
つまり,⑵では債権者が「疎明」をする必要があるので,債権者側がどの程度の調査をすればハードルをクリアできるのでしょうか?

 

実は,法改正の過程で,⑵のハードルが高いので低くしよう,という議論もありました(日弁連は,そうした方向の意見を出していました)。
結局,⑵の要件について法改正はなかったのですが,法改正の過程で,次のような意見が出されました。

部会のこれまでの議論や意見募集の結果においては,先に実施した強制執行の不奏功等の要件の立証(疎明)が必ずしも容易でないとの評価を前提として,この要件の緩和を求めるものがあった。
そして,その立証(疎明)の困難性に関しては,民事執行法第197条第1項第2号の「知れている財産」の意義が執行裁判所によって厳格に解釈されることとなれば,申立人(債権者)が過度の負担を負うこととなるとの指摘等がされた。

もっとも,同号の要件については,部会のこれまでの議論において,これに関する現在の裁判実務の状況を見ると,債務者の住居所在地の不動産登記事項証明書の提出等により債務者名義の不動産が見つからないことなどが確認されればそれで足りるとしている例が多いため,その疎明はそれほど困難ではないとの反論がされたほか,この要件を満たさないことを理由として申立てが却下された事例はほとんどないことが紹介されたところである。
意見募集の結果を見ても,これと異なる実例等を指摘するものはなかった。
そのため,先に実施した強制執行の不奏功等の要件の立証(疎明)が必ずしも容易ではないとの評価は,現在の裁判実務を必ずしも正確に反映したものではないと思われる。

出典:法制審議会(民事執行法部会)資料14-1(http://www.moj.go.jp/content/001244043.pdf
(※対応する会議議事録:http://www.moj.go.jp/content/001261521.pdf

要するに,実際の運用ではハードルが高く設定されてはいないので,法改正をする必要はない,という意見です。
弁護士の感覚では,調査した上での事実認識なのかどうか疑問を感じますし,運用状況を理由に法改正を不要とする理屈にも,引っかかるところがあります。

しかしいずれにしても,「債務者名義の不動産が見つからないことなどが確認されればそれで足りるとしている例が多いため,その疎明はそれほど困難ではない」「この要件を満たさないことを理由として申立てが却下された事例はほとんどない」という意見が,法改正の議論の中で重視されたといえます。
この点はおおいに参考になります。

実際のケースでは,裁判官によって判断に幅があります。
そうした場面で,上記の議論は,裁判官を説得する材料に使えそうです。

財産開示手続は,第三者からの情報取得手続(債務者の不動産に関する情報の取得・債務者の給与債権に関する情報の取得)の要件にもなっています。
法改正とともに,改正されなかった点についても,より積極的に活用するための材料が出てきている場面といえます。

あなたにとって
最善の解決策を。

お電話で予約される方

0955-24-9255

受付:平日 午前9時〜午後5時

メールフォームから予約される方

法律相談予約フォーム

相談料 5000円/1時間(税別)
*ただし借金の相談は無料