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弁護士法人いまり法律事務所

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駐車場内の事故に道路交通法は適用されるか

駐車場内の事故に,道路交通法は適用されるでしょうか?

まず答えをいいますと「事情によります。」
事情とは,駐車場全体の形状や事故現場の状況,事故状況などです。

以下,その説明です。

道路交通法は,運転者の義務やルールを定めています。
例えば,

  • 左方優先の原則(道路交通法36条1項1号。交通整理の行われていない交差点で,優先道路や道路間の幅員差がある場合でなければ,左方から進行してくる車両の進行を妨害してはならない)
  • 左右の見とおしがきかない交差点での徐行義務(道路交通法42条1号)
  • 安全運転の義務(道路交通法70条。他人に危害を及ぼすような速度や方法での運転の禁止)

などです。
駐車場内での事故についても,こういった義務やルールが適用されるかどうか,という問題です。

なお,別冊判タ38号『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(全訂5版)』で,駐車場内の事故類型と基本過失割合が追加されました。
同書に載っている事故類型なら,同書をベースにすることになりますが,載っていない事故類型の場合には,本問題を検討する必要があります。

さて,道路交通法2条1項1号によると,同法でいう「道路」は以下のものです。

  • 道路法2条1項の道路(※道路法2条2項6号 道路管理者(国土交通大臣または都道府県)が設置する,道路上または道路に接した駐車場は「道路」に含まれる)
  • 道路運送法2条8項の自動車道(専ら自動車の交通の用に供することを目的として設けられた道で道路法による道路以外のもの・・・)
  • 一般交通の用に供するその他の場所

上によると,民間の駐車場,つまりコインパーキングや店舗敷地内の駐車場の場合は,「一般交通の用に供するその他の場所」にあたるかどうか,という問題になります。

判例は,次のように述べています(最判昭和44年7月11日集刑172号151頁)。
道路交通法は,二条一号で「道路」の定義として,道路法に規定する道路等のほか,「一般交通の用に供するその他の場所」を掲げており,たとえ,私有地であつても,不特定の人や車が自由に通行できる状態になつている場所は,同法上の道路であると解すべきである・・・
なおこの判例は,道路交通法違反で処罰されるかどうかが問われた,刑事事件の事案です。

判例によると,「不特定の人や車が自由に通行できる状態になつている場所」かどうかがポイントです。
具体的には,

  • 道路としての形態は必ずしも必要でないが,
  • 不特定の人や車の通行が自由に許され(公開性),
  • 客観的に反復継続してこれらの通行の用に供されていること(客観性)

が必要,と考えられています。

実際の場面では,駐車場にもいろいろなものがあります。

大型店舗や複合商業施設の大規模駐車場は,出入口も複数あり,駐車場内での移動経路,停止位置や歩行者用通路の表示がされていたりしますね。
一方,中小店舗の敷地内の駐車場では,そもそも出入口が一つしかなく,移動経路などの表示もない(形状から移動経路が明らかで,指示する余地も必要もない)場合が多いでしょう。

したがって,こうした駐車場に道路交通法の適用があるかどうかは,個別の事情による,といわざるを得ないのです。
また,仮に道路交通法の適用がないと判断される場面であっても,道路交通法上の義務やルールは一切考慮されない,というわけでもありません。
駐車場全体の形状,事故現場の状況や事故状況から,道路交通法上の義務やルールをどの程度期待すべきか,という,複合的な考慮がなされることになります。

実際に交通事故の案件を取り扱っている実感としては,上記判タ別冊(全訂5版)が出たことで,駐車場内の事故の過失割合が整理された反面,それまでは争いにならなかった類型が争いになりやすくなった印象があります。
駐車場内では比較的低速で進行することが多いので,重大な事故は比較的起こりにくいと思いますが,駐車区画への出入,後退進行など,不規則な動きが多いので,軽微な事故はむしろ起こりやすいともいえます。

ぜひ,任意保険への加入,弁護士費用保険の付加などで,もしもの事故にお備えください。

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