「急がば回れ」,「ゆっくり急げ」。少しずつでも,前を向いていきたいですね。
世の中の関心が,新型コロナウイルス感染症の影響と対応策に集まっていますが,その陰で新しく始まった制度があります。
事業承継のときに,経営者保証を解除する可能性が広がる制度です。
関連する支援制度とともに,2020年4月1日からスタートしています。
・事業者向けパンフレット(経営者保証ガイドライン事務局Webサイト)
ここで出てくる「経営者保証ガイドライン」は,「中小企業,経営者および金融機関の対応についての自主的・自律的な準則」とされています。
法的な強制力はありませんが,金融庁の銀行に対する監督指針でも言及されており,金融機関にとっては無視できない意味合いがあります。
平成26年から運用されています。
新たに始まった制度では,経営者保証ガイドラインに特則が追加され,事業承継時の経営者保証解除を後押しするルールが定められました。
あわせて関連する支援制度も創設されました。
制度のポイントは,以下のとおりです。
1 原則として,前経営者・後継者の双方から二重に保証を求めることはしない。
2 経営者保証コーディネーターによる支援制度の創設
3 経営者保証を不要とする新しい信用保証制度の創設
以下,順をおって説明します。
「二重徴求の原則禁止」なので,一見すると,新旧経営者のどちらか片方だけであれば禁止ではないのでは,と思うかも知れません。
しかし,以下のとおり,経営者保証自体の解除まで後押しするものになっています。
ガイドライン(特則)では,金融機関に対して次のように求めています。
旧経営者について・・・保証解除に向けて適切に見直しを行うこと
新経営者について・・・保証を求める必要性を慎重に考慮すること
旧経営者が事業承継に伴って退任すると,既存の保証は,経営者保証ではなく第三者保証に該当する可能性が出てきます。
第三者保証については,2020年4月1日施行の改正民法で,締結前の公正証書による意思確認が求められるようになりました。
ガイドライン(特則)でも,そのことを考慮して保証解除に向けた適切な見直しを検討することを求めています。
また,新経営者との関係でも,保証契約の必要性や,事業承継に与える影響を考慮して慎重に判断することを求めています。
後述の経営者保証コーディネーターや,外部専門家の支援を受けている場合は,その結果も考慮に含めるよう求めています。
新経営者に経営者保証を求めることがやむを得ないと判断される場合でも,後述の事業承継特別保証制度など,代替手段の検討を求めています。
また,ガイドライン(特則)では,例外として二重徴求が許容される場合について,4類型に整理されました。
⑴前経営者の保証解除が予定されている中で,一時的に二重徴求となる場合
⇒例:前経営者が死亡して相続が未確定の場合
⑵前経営者に対する保証を解除することが著しく公平性を欠くことを理由として,後継者が前経営者の保証を解除しないよう求めている場合
⇒例:法人から前経営者に多額の貸付金等が残存している場合
⑶先行して金融支援や返済の延滞があり,かつ特段の理由により当初見込んでいた経営者保証の効果が大きく損なわれるため,前経営者・後継者の双方から保証を求めなければ金融支援を継続することが困難となる場合
⇒例:前経営者から後継者への多額の資産等の移転が行われている場合,法人から前経営者・後継者の双方に多額の貸付金等が残存している場合
⑷前経営者・後継者の双方から自らの事情により保証提供の申出があり,二重徴求の原則禁止の扱いを十分説明しても申出の意向が変わらない場合
金融機関は,二重に保証を求めることが真に必要な場合には,その理由や,保証が適用されない場合の融資条件等について,前経営者・後継者の双方に十分に説明し,理解を得ることが必要,とされています。
新旧経営者が保証解除を目指す場合は,ガイドラインに沿った以下のような態勢整備が必要です。
法人と経営者の明確な区分・分離
財務基盤の強化
財務状況の正確な把握と積極的な情報開示
これを支援する制度として,後述の経営者保証コーディネーター制度がありますので,積極的にご活用ください。
新たな支援制度として,経営者保証コーディネーターが,各地の「事業承継ネットワーク」に常駐します。
このコーディネーターから,以下のような活動を通じて,経営者保証解除に向けた支援を受けることができます。
経営者保証に関するガイドラインの充足状況の確認
事務局に常駐,金融機関・信用保証協会等との窓口役
金融機関との交渉同席,登録専門家の派遣
各地の事業承継ネットワーク事務局が問合せ先になります。
例えば九州の事業承継ネットワーク事務局はこちら。
https://shoukei.go.jp/soudan/area07
経営者保証を不要とする「事業承継特別保証制度」が創設されます。
各地の信用保証協会が取扱いを行います。
一定の要件(財務指標上の用件や法人・経営者の分離など)がありますので,詳しくは以下のパンフレットなどをご参照ください。
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